
住む場所に対する価値観
かつて私が住む場所を選ぶ基準は「利便性」でした。通勤のしやすさや駅までの距離を重視し、杉並区、練馬区と移り住んできました。子どもが生まれると「安全に遊べる場所があるか」という視点が加わり、東久留米市に住むことになりました。そして、子どもの成長に伴い手狭になったため、新たな住まいを探し、学園町へ引っ越しました。
引っ越す前から、学園町の落ち着いた雰囲気に憧れていました。大きな木々が残るこのまちは特別に感じられ、実際に住むことになったのは、ご縁があったからだと感じています。
引っ越してすぐに自治会の方から「自治会に入りませんか?」と声をかけられ、自治会の存在を知りました。それまでの生活では自治会活動に触れる機会がほとんどなく、「まちの在り方」について深く考えたことがありませんでした。しかし、この町で暮らすうちに、自治会が果たす役割や、まちを守る意識の大切さに気づいていきました。

緑が減っていくこと、その変化への思い
学園町に住み始めた当初は、開発がそれほど進んでいませんでした。しかし、ここ数年で更地になった土地に新しい家が次々と建ち、かつての緑豊かな景観が少しずつ失われていくのを感じます。以前は広々とした敷地にゆとりをもって建てられていた家も、現在では敷地を細かく分ける形で建設されることが増えました。
私自身も家を建てる際に「まちの景観にどんな影響を与えるのか」を深く考えずに決めましたが、周囲の変化を見ているうちに、まちの様相が変わっていくことへの寂しさを感じるようになりました。
学園町の持つアイデンティティをどう守るかは、私たち住民が考え続けなければならない課題です。開発の流れを止めることは難しくても、学園町らしさを守るためにできることはあるはずです。例えば、家を建てる際に緑を残す工夫をしたり、住民同士で景観について話し合ったりすることが、その第一歩になるのではないでしょうか。

住民の意識がつくる学園町らしさ
「どんなまちを目指すのか」を住民一人ひとりが意識し、考え続けることが大切です。私たちの世代が今どのような選択をするかで、次の世代が受け継ぐ学園町の姿が決まります。
特に相続の問題が発生したとき、十分な議論をする間もなく開発が進んでしまうことがあります。そのため、住民が普段から「このまちをどうしていきたいのか」を話し合うことが必要です。
私が考える「学園町らしさ」の象徴は、やはり「緑の多さ」です。住民が「緑を大切にしたい」という意識を持ち続けることで、この町の良さは守られるのではないでしょうか。たとえ小さな植物でも、「ここに1本木があるだけで雰囲気が変わる」と感じられるまちであり続けたいと思います。

コミュニティがつなぐ心地良い暮らし
学園町の魅力は、単なる住宅街ではなく、住民同士がつながり、まちを守り続ける意識を共有できることにあります。自治会活動を通じて学園町の歴史や価値を知ることで、「このまちを守りたい」という気持ちが強まりました。
また、住民同士の自然な交流が生まれやすい環境も、この町ならではの魅力です。例えば、回覧板を回すときに顔を合わせて話をすることで、ちょっとしたつながりが生まれます。日々の暮らしの中で季節の変化を感じ、それを話題にできる関係性が築かれていることは、とても心地良く感じます。
自由学園の存在も、学園町のアイデンティティを形作る重要な要素の一つです。学園町の名前の由来となったこの学び舎は、まちの文化と調和しながら発展してきました。こうした歴史的背景を住民が理解し、大切にすることが、このまちの良さを守ることにつながるのではないでしょうか。