Interview

帰ってこられるまち、学園町のコミュニティとこれから

学園町住民 Wさん夫妻さん | 更新日:2026.04.01

学園町に戻るという選択

夫:私は24歳まで学園町で育ちました。結婚してからは都心や海外で暮らした時期もありましたが、子育てのことを考えたときに、もう一度このまちに戻ることにしました。現在私たち夫婦は、両親の家と隣接する一軒家に住んでいます。いわゆる“スープの冷めない距離”というより、もう少し近い距離かもしれません。

妻:私は転勤族の家庭で育ってきたので「ふるさと」と呼べる場所がなく、ずっと憧れがありました。これから子育てをするなら、引っ越しを繰り返すのではなく、腰を据えて住める場所がいいと思っていました。

夫:ここに住む理由が、きちんとあったわけではありません。でも、自分の家族や友人との関係はずっとこのまちにありますし、それを大切にしたい気持ちが強くありました。

このまちで感じる、安心感と自然

夫:学園町に戻ってきて、まず感じたのは安心感でした。駅から家まで、自由学園の横を通って整った区画の道を歩く。その時間が、私にとって「帰ってきた」と感じる瞬間です。

都心と比べて違うと感じるのは、空の見え方です。都心は高い建物が多く、なかなか空を見上げられません。でも学園町は道を歩いていても夕日がきれいに見えます。家の出窓からもよく見えて、そこがこのまちならではだと感じています。

妻:私は鳥の声がとても印象的です。朝はさえずりで目が覚め、夜はフクロウの鳴き声が聞こえることも。私は鳥に詳しくないのですが、夫によると、ヤマガラやアオゲラなど、都心ではあまり見ない鳥が庭に来ることもあるそうです。

秋になると、自由学園の前のイチョウ並木では銀杏の匂いがして、足元には栗が落ちていることもあります。そういう自然の気配を、日常の中で身近に感じています。

コミュニティに迎えてもらえた喜び

妻:私は小さい頃から引っ越しの多い生活だったので、ご近所さんが玄関先で立ち話をしているような風景に憧れていました。だから、学園町で暮らし始めて、コミュニティに入れてもらえた感じがして、とても嬉しかったです。

夫:私は子どもの頃から、両親が自治会や地域の人たちと関わっている姿を見てきました。父もこのまちで育ってきたので、父の友人が家に遊びに来ることもありました。地域のことに関わるのは大変そうでもありましたが、それがとても自然で、楽しそうにも見えました。だから私自身も、そうありたいなと思っています。

妻:東京は、いろいろな土地から来た人が集まってできている都市だと思うのですが、ここはそれとは少し違っていて。みんながちゃんと「自分のまち」だと思って住んでいる。そこが良いなと思います。

緑を守ることへの、正直な気持ち

夫:人によっては、自治会の活動を重く感じることもあるかもしれません。地域とのつながりを求めて移り住む人ばかりではないですし、ご近所づきあいを煩わしく感じる人もいると思います。

土地が細かく分けられていくことには寂しさもあります。一方で、広い土地をそのまま購入できる方は限られています。そうした形で土地が売られていくのも、時代の流れとして理解はしています。

妻:私たちは、これまでこのまちを守ってきた方たちの努力の上に暮らしているんですよね。自分たちでつくったものではない緑や景観の恩恵を受けているのだと感じます。

夫:確かに、“フリーライド”させてもらっているような感覚があります。でも、これから子どもが生まれて暮らしが変わっていく中で、見え方も変わるかもしれません。今はまだ実感していませんが、子どもが緑や自然に興味を持つようになったら、「残したい」という気持ちもきっと強くなるのだと思います。

まだ途中にいる私たちの、これから

夫:友人を家に招いてバーベキューをすることもあります。そこで「緑が多くていいね」と言われることは少なく、どちらかというと同世代の人たちは、駅に近いとか、お店が多いとか、そういう利便性のほうを魅力として見ている人が多いです。

妻:「バーベキューができるなんてすごいね」と言われることはあります。ここなら、庭にビニールプールを出して、思いきり遊ばせることもできます。子育てするようになったときに、「学園町っていいかも」と思ってくれる人も増えてくるかもしれません。

夫:最近あらためて思うのは、このまちの魅力は緑だけではなく、コミュニティなんだろうなということ。自治会のつながりもそうですし、家族や友人とのつながりもそう。このコミュニティがなくなってしまうのは寂しく感じます。

これから子育てしていく上で、共有できる遊び場や、みんなが集まれる場所があれば、地域の魅力も高まるのではないかと思います。
だから自分がこのまちに居続けて、みんながいつでも戻ってこられる場所をつくっていきたいです。バーベキューできる場所でもいいし、人が自然に集まれる場所でもいい。それがこれからの自分の抱負です。