
憧れのまちとの出会い
私が学園町と出会ったのは、まだ隣接する市のマンションに住んでいた頃でした。友人と一緒に自転車で公園へ向かう途中、偶然このまちを通りかかり、その瞬間に心を奪われました。線路を挟んだ向こう側に広がる緑のある風景は、まるで別荘地のように静けさが漂い、自然の美しさが満ち溢れていました。まるで別の世界に足を踏み入れたかのような感覚をもたらしてくれたことは、今でも鮮明に覚えています。
東京都内で生まれ育った私は、かつて住んでいた場所は庭に木々はあったものの、公害やスモッグに悩まされる環境でした。そのためか、私はずっと田舎の景色が好きで、小川や豊かな緑がある環境に憧れていました。
その後、子どもが成長し、猫が飼える一軒家に住みたいという希望が芽生えた頃、この地域の大きな邸宅が区画整理されて小さく分譲されることを知りました。「ずっと憧れていたこの土地に住みたい」と、この学園町に引っ越してきました。それが10年前です。子どもの頃からの願いが叶い、この自然豊かな学園町に引き寄せられるように、ここの住民になりました。

自然と人の想いが織りなす風景
学園町の最大の魅力は、何と言ってもその豊かな緑と静かな住環境です。駅からほど近い場所にありながら、まっすぐな道沿いに続く緑の景色は、季節ごとに異なる表情を見せてくれます。朝、窓を開けると見える木々の景色、東京でありながら、湧水の湧く川が流れ、秋には色づいた落ち葉を踏みながら散歩したりと、四季折々の美しい自然を感じることができる日常は、このまちならではの贅沢です。今まで住んできた場所では味わえなかった風景が、ここでは当たり前のように馴染んでおり、その新鮮さに今でも感動しています。

自治会の役割と住民の想い
学園町の美しい景観は、自然に生まれたものではなく、長年住む方々が「この緑を守りたい」という強い思いを持ち続けてきた結果です。自治会を中心に保全活動に取り組むことで、学園町は今の姿を保っています。住民一人ひとりの意識の高さが、景観を守り続ける大きな力となっているのです。私がこのまちに移り住んだ当初、ただ「素敵なまちだな」と感じていただけでしたが、自治会の方々の熱意に触れる中で、私もこのまちを守る一員でありたいと思うようになりました。それがきっかけで、民生委員の役割を引き受け活動を始めました。
自治会の活動に参加する中で、学園町の住民の皆さんがいかにこのまちを愛し、大切に思っているかがよく分かります。住民同士のつながりや協力が、まちの景観を守り、さらに発展させるための基盤となっていると感じています。

まちの価値を共有し、次世代へとつなぐ
学園町に住んでから、私は「ここは誰もが簡単に住めるまちである必要はないのではないか」と考えるようになりました。もちろん、排他的な意味ではなく、このまちの魅力を理解し、価値を大切に思える人たちとともに暮らしたいという思いからです。学園町憲章に象徴されるように、住民が共に守り続けてきた文化や価値があり、それを理解し、大切に思える人たちとともに暮らすことが、学園町の未来に繋がると感じています。
また、この景観を未来に残すためには、住民一人ひとりの意識が必要不可欠です。特別なルールがあるわけではありませんが、自然と「このまちを大切にしたい」という気持ちがあふれるからこそ、このまちの良さが継続していくのです。
高齢化が進み、広い土地が手放される機会が増える中、新しく来る方々にこのまちの魅力を伝えることが大切だと思います。そのためには、ここがいかに美しく価値があるか、そしてその美しさを守り続けるためにどれだけの努力がなされてきたかを理解してもらう必要があります。最近では、若い世代でもこのまちの美しさを守りたいと思って移り住んでくる方々が増えており、共感してくれることに嬉しさを感じています。
このまちの価値を理解し、大切に思う人々が次の世代にその想いを繋げていく。そんな循環を作り出していきたいと考えています。